STはるの研鑽記

老健STが孤独にめげず自己研鑽に励むブログです。

認知症と日中の傾眠

 認知症者とお付き合いする上で、日中の傾眠は切り離せないものです。原因はお薬の副作用、疾患の影響、昼夜逆転など多々あります。これらの原因を探りながら、覚醒を促すことが、認知症のケアには欠かせません。

 また、日中の傾眠は認知症を直接の原因とすることもあるようです。この論文では、アルツハイマー認知症者は、メラトニンと言われる、体内時計を整えるホルモンが、健常高齢者に比べ減少していることが説明されていました。

https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/054120994.pdf

メラトニン松果体という部位から分泌されますが、アルツハイマー認知症で障害されることは知りませんでした。これまで認知症者の過眠は、大脳皮質の萎縮に伴うものと考えていましたが、覚醒時は周囲に反応されることも多く、疑問に感じていました。そのため、この論文には納得させられるものもありました。

 さらに、認知症の症状として、アパシー(無気力)というものがあり、内側前頭前野の障害で生じると言われています。活動に消極的になることがほとんどですが、私は日中の傾眠が、じつはこの症状の一部ではと考えることがあります。以前いらした患者さんで、閉眼したまま過ごされることが多いものの、不意に頭を掻きむしり、周囲を見廻し、また閉眼されるという行為を繰り返す方がいました。一見眠りは浅いですが、すっきりと起きていることはまれでした。かつての私は、どうすれば起きていてもらえるか、考えあぐねていました。

出典 認知症の心理アセスメント

 

一般的に言われている対策として、

・日光を浴び、メラトニンの分泌を促進させる。

・日中の活動を促すことで、昼夜逆転を防ぎ、生活リズムを定着させる。

 の2点が挙げられます。

 しかし、これらは根本的な解決には繋がりにくい傾向はあります。とはいえ、コップを持ってもらい、一口でも自分でお茶を飲んでもらう、前歯だけでも自分で磨いてもらう、こういった、スモールステップで日々の活動を支えながら、出来ることを継続してもらうことは、その人らしさを支えることには繋がると思っています。