STはるの研鑽記

老健STが孤独にめげず自己研鑽に励むブログです。

パーキンソン病による嚥下障害と自覚症状

 進行性疾患に伴う嚥下障害は、無自覚なまま進行する例が多くあります。理由は、変化がムセの増加や発熱など、明らかな要素が見て取れるまで気づかれにくいことが挙げられます。また、進行に伴い認知機能が低下することも要因になります。今回ご紹介するのは、パーキンソン病の患者さんに行った他覚的臨床評価と自覚症状の比較研究に関する論文です。https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.6001200398

 

 概要としては、パーキンソン病の患者さん29名に、食べにくさについて、質門紙でのアンケートを行ったあと、言語聴覚士が評価を行い、患者さんの感じ方と、実際の初見にどんな差があったか調査がされました。質問紙は聖隷式嚥下質問紙と言われるもので、その名の通り、聖隷福祉事業団が作成したもので、広く問診で用いられています。ST評価は以前紹介したMASAを用いています。

出典 パーキンソン病患者の嚥下障害を早期検出するための他覚的臨床評価実施の必要性 

 比較検討した結果としては、他覚的初見が見つかった患者さん18名のうち、11名の方が、自覚症状なしと返答されていました。また、自覚症状ありとの返答をされていた項目では「やせてきました?」「ものが飲み込みにくいとかんじることがありますか?」「食べるのが遅くなりましたか?」「硬いものが食べにくくなりましたか?」の4つが該当しました。これらは一般的な嚥下障害の症状と合致するところではあります。

出典 パーキンソン病患者の嚥下障害を早期検出するための他覚的臨床評価実施の必要性 

 ちなみに、他覚的所見を認めた患者さんの減点項目は以下のようになります。

 

出典 パーキンソン病患者の嚥下障害を早期検出するための他覚的臨床評価実施の必要性 

 パーキンソン病の嚥下障害の病態は、準備期〜咽頭期に渡り、多様な症状を呈すると言われています。しかし、送り込みの停滞は初期症状の特徴と言われています。ロージェマンは、この病態を舌の固縮によるものと述べており、口腔期障害や舌の動きの悪さが現れた上記結果と一致しています。

 今回の結果は、先行研究によるパーキンソン病の症状と臨床所見が一致していること、そして、多くの患者さんは、この病態を気付くことなく過ごされていることを示しています。

 一般的に嚥下障害の基準はムセで測られています。しかし、食べるのが遅くなった、食べ物が口に残る、のどをなかなか通らないというのも、大切な所見の1つです。誤嚥性肺炎は突然起きるのではなく、少しずつ食事が取れなくなっていった結果として起きることが多いです。なので、その方の一番食事を楽しめる環境は何か、常に考えていかなくてはと思っています。

最近お見かけしないと思っていたら、パーキンソン病の診断を受け、闘病生活中だと、同じ疾患の患者さんに教えてもらいました。嚥下障害が現れる時期は必ずしも身体機能の進行と一致はしていません。気になられたら、専門機関にご相談を。