STはるの研鑽記

老健STが孤独にめげず自己研鑽に励むブログです。

義歯の役割

 歯は食べ物を美味しく食べる上で大切なものです。同時に、言葉をきれいに発音する上でも重要な役割を担っています。

 そんな大切な歯ですが、高齢になり、自分の歯を失うことが一般的です。はるママは、早い時期から出産後のカルシウム不足や齲歯が原因で抜歯しており、殆ど歯が残っていません。そんな歯を補うものとして、入れ歯が使われます。勿論、自分の歯に変わるものにはなりません。中には、入れ歯を作らずすきっ歯のまま、生活される方も多数います。しかし、きちんとあった入れ歯を使うことは、たくさんのメリットがあります。

 

①噛み切りすり潰す力

 食べる上での歯の役割は、歯の種類により異なります。前歯で硬いもの、繊維質のものを噛み切り、奥歯ですり潰しています。上下小臼歯まで歯列が残っていれば、口腔機能はさほど低下しないという「短縮歯列」の考え方があります。確かに、私の施設でも、歯のないまま常食を食べる方はいます。しかし、噛むことの効率性を考えると、やはり本来の歯の機能の変わりは必要になってきます。

出典:おいしいステーキの焼き方5つのポイント!難しいこと一切なしの簡単な方法とは?

 

②残っている歯の保護

 一部の歯がなくなり、そのままにしておくと、他の歯がその変わりを果たそうとします。また、かみ合わせの対になる歯が上顎歯なら、少しずつ下がってきます。そして、本来の役割と別の歯が噛み合わさり、咬合干渉が起き、段々と残された歯が歪み、歯周病の原因にもなります。無理に圧力が残された歯にかかった結果、脱落することもあります。

出典:咀嚼の本

 

③発音が良くなる

 発音は息を吐くときに流れてくる空気は、口の動きで摩擦が生じることで産生されます。歯がなくてもきれいに発音される方もいますが、私達が無意識に学習している発音時の口の動きは、歯があることを前提にしています。そのため、前歯がない状態だと、息のぬけた不明瞭な発音になります。

出典:日本語の音声入門

 

④審美性

 歯の見た目もさることながら、特に無歯顎の方は、歯や歯槽骨による、唇やその周辺の指示性を失うため、口元がたるみ、頬が垂れ下がった老人用顔貌と言われる顔になっていきます。しかし、しっかりとあった入れ歯を使用すると、本来の顔の輪郭に戻っていきます。

出典:咀嚼の本

とはいえ、入れ歯は人によっては調整が難しく、使いこなせない方もいらっしゃいます。歯の再生医療も進んでいるため、今後はより手の届く技術となることを期待するばかりです。

 

https://www.satsuki-dc.com/pulp-regeneration/

はるの由来

 ハンドルネームに「はる」という名を使っていますが、私の本名には全く入っていません。私が担当させて頂いた方で、「はるこさん」が多数おり、どこか親密感を抱いていました。なので、その方を思い出しながら前に進みたいと思い、この名前にしました。

 中でも、見取りに関わらせて頂いたはるこさんからは多くのことを教えて頂きました。その方を思うたびに、「平家物語」のオープニングの歌詞を思い出します。

https://youtu.be/aEDlSU3an_8

 最終回のストーリー 初めから分かってたとしても 今だけはそこにあるよ

 終末期リハは寂しいものです。患者さんは終わりに向かっており、良くなることはありません。しかし、だからこそ出来る限りのことをしたい。老健施設にとって、利用者さんと家族さんに、より良い最期の時間を提供することは、1つの課題にもなっています。今このときこそ大切に。

出典 ひとめで分かる!【図説】アニメ平家物語

パーキンソン病による嚥下障害と自覚症状

 進行性疾患に伴う嚥下障害は、無自覚なまま進行する例が多くあります。理由は、変化がムセの増加や発熱など、明らかな要素が見て取れるまで気づかれにくいことが挙げられます。また、進行に伴い認知機能が低下することも要因になります。今回ご紹介するのは、パーキンソン病の患者さんに行った他覚的臨床評価と自覚症状の比較研究に関する論文です。https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.6001200398

 

 概要としては、パーキンソン病の患者さん29名に、食べにくさについて、質門紙でのアンケートを行ったあと、言語聴覚士が評価を行い、患者さんの感じ方と、実際の初見にどんな差があったか調査がされました。質問紙は聖隷式嚥下質問紙と言われるもので、その名の通り、聖隷福祉事業団が作成したもので、広く問診で用いられています。ST評価は以前紹介したMASAを用いています。

出典 パーキンソン病患者の嚥下障害を早期検出するための他覚的臨床評価実施の必要性 

 比較検討した結果としては、他覚的初見が見つかった患者さん18名のうち、11名の方が、自覚症状なしと返答されていました。また、自覚症状ありとの返答をされていた項目では「やせてきました?」「ものが飲み込みにくいとかんじることがありますか?」「食べるのが遅くなりましたか?」「硬いものが食べにくくなりましたか?」の4つが該当しました。これらは一般的な嚥下障害の症状と合致するところではあります。

出典 パーキンソン病患者の嚥下障害を早期検出するための他覚的臨床評価実施の必要性 

 ちなみに、他覚的所見を認めた患者さんの減点項目は以下のようになります。

 

出典 パーキンソン病患者の嚥下障害を早期検出するための他覚的臨床評価実施の必要性 

 パーキンソン病の嚥下障害の病態は、準備期〜咽頭期に渡り、多様な症状を呈すると言われています。しかし、送り込みの停滞は初期症状の特徴と言われています。ロージェマンは、この病態を舌の固縮によるものと述べており、口腔期障害や舌の動きの悪さが現れた上記結果と一致しています。

 今回の結果は、先行研究によるパーキンソン病の症状と臨床所見が一致していること、そして、多くの患者さんは、この病態を気付くことなく過ごされていることを示しています。

 一般的に嚥下障害の基準はムセで測られています。しかし、食べるのが遅くなった、食べ物が口に残る、のどをなかなか通らないというのも、大切な所見の1つです。誤嚥性肺炎は突然起きるのではなく、少しずつ食事が取れなくなっていった結果として起きることが多いです。なので、その方の一番食事を楽しめる環境は何か、常に考えていかなくてはと思っています。

最近お見かけしないと思っていたら、パーキンソン病の診断を受け、闘病生活中だと、同じ疾患の患者さんに教えてもらいました。嚥下障害が現れる時期は必ずしも身体機能の進行と一致はしていません。気になられたら、専門機関にご相談を。

認知症と日中の傾眠

 認知症者とお付き合いする上で、日中の傾眠は切り離せないものです。原因はお薬の副作用、疾患の影響、昼夜逆転など多々あります。これらの原因を探りながら、覚醒を促すことが、認知症のケアには欠かせません。

 また、日中の傾眠は認知症を直接の原因とすることもあるようです。この論文では、アルツハイマー認知症者は、メラトニンと言われる、体内時計を整えるホルモンが、健常高齢者に比べ減少していることが説明されていました。

https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/054120994.pdf

メラトニン松果体という部位から分泌されますが、アルツハイマー認知症で障害されることは知りませんでした。これまで認知症者の過眠は、大脳皮質の萎縮に伴うものと考えていましたが、覚醒時は周囲に反応されることも多く、疑問に感じていました。そのため、この論文には納得させられるものもありました。

 さらに、認知症の症状として、アパシー(無気力)というものがあり、内側前頭前野の障害で生じると言われています。活動に消極的になることがほとんどですが、私は日中の傾眠が、じつはこの症状の一部ではと考えることがあります。以前いらした患者さんで、閉眼したまま過ごされることが多いものの、不意に頭を掻きむしり、周囲を見廻し、また閉眼されるという行為を繰り返す方がいました。一見眠りは浅いですが、すっきりと起きていることはまれでした。かつての私は、どうすれば起きていてもらえるか、考えあぐねていました。

出典 認知症の心理アセスメント

 

一般的に言われている対策として、

・日光を浴び、メラトニンの分泌を促進させる。

・日中の活動を促すことで、昼夜逆転を防ぎ、生活リズムを定着させる。

 の2点が挙げられます。

 しかし、これらは根本的な解決には繋がりにくい傾向はあります。とはいえ、コップを持ってもらい、一口でも自分でお茶を飲んでもらう、前歯だけでも自分で磨いてもらう、こういった、スモールステップで日々の活動を支えながら、出来ることを継続してもらうことは、その人らしさを支えることには繋がると思っています。

 

 

 

 

 

アシェット

 はるの住まいは高知です。しかも市内ではありません。一昔前は、おしゃれなカフェや、専門店もありませんでした。しかし、ここ10年で観光地化が進むにつれ、高知の食材を生かした食べ物屋がぐっと増えました。今日は「アシェット」に行ってきました。

本日の前菜です。窪川ポークのローストや、土佐湾で取れた魚の刺身、地元さつまいものキッシュなど、シェフの高知の食材へのこだわりが伺えます。写真にはありませんが、この前にはポタージュとサラダもついていました。

 

 低温でグリルしたポークです。洋食屋のポークソテーを頂くたびに、臭みがないまま、柔らかく肉肉しく調理出来るのか不思議になります。牛肉のステーキ以上の満足感です。

 デザートです。アイスとガトーショコラですが、アイスはとても軽く、柔らかい口溶けでした。

 

今日もご馳走様でした。

お昼のコースで2000円です。やはり高めですが、内容は充実していると感じます。ただ、完全要予約性なのでご注意下さい。

認知症ケア専門士試験 合格

 

 認知症ケア専門士という資格試験の合格証が届きました。嬉しい反面、この肩書を名乗るには、知識も技量もまだまだ、と自分では感じています。専門士の名に恥じない仕事が出来るよう、精進していきます。

 「認知症ケア専門士」の資格についてはこちらで詳しく紹介されています。

https://www.dcq-ex.net/shiken.htm

 マイナー資格であるため、はるも受験にあたり、情報収集に苦労しました。なので、合格までの道のりをご紹介しようと思います。

 

★使用した本

メインテキストとして使用しました。基本はこの本日からのインプットです。

問題集です。アプリがダウンロード出来る為、買いました。

標準テキストになります。細かい知識の確認に使いました。

★勉強法

 テキストだけでも膨大な内容なので、最初から問題を解き、分からない部分はテキストを読み、線を引いていきました。問題だけで4周したと思います。メインテキストに書かれてない内容は、ルーズリーフに書き込みながらはさみました。極力メインテキストに情報を集約し、纏まった時間が取れたときに読み返していました。受験前後は仕事でストレスを抱えることが多く、余裕もありませんでした。なので、朝の起きぬけ30分、昼休憩の10分など、ちりつも方式で勉強時間を捻出しました。最後の1ヶ月は、明らかに知識の足りていない社会資源や各論に特化してテキストを読み込みました。

 オンライン講義や模試を受ける方もいますが、私は不要でした。合格率50%前後と、この業界では低めですが、問題から傾向をしっかり掴みながら、理解を深めれば確実に合格出来ます。

★費用

テキスト・・・計20000円弱

受験費・・・一次試験で12000円、二次試験で8000円、登録料で15000円、年会費5000円 計40000円 合計  60000円になりました。

 STになるとき、恩師より、年収の1割は自己研鑽に費やせと指導を受けました。金額から言えば、1割にも達していません。しかし、現時点では高い資格だったと感じています。とはいえ、試験という強制力が伴うこと、その後も資格更新のために、講習を受け、知識をアップデートしていく機会となること、転職時の武器となることを考えると、自己研鑽の場としては良かったのかとも思っています。

 今の時代は日進月歩、常に新しい知識と技能を求められます。この困難な時代を乗り越えるべく、励んでいきましょう。

 

エリザベス女王 生涯現役という生き方

 昨年は多くの著名人がこの世を去りました。安倍前首相のように、志半ばで世を去った方もいた反面、長寿を全うし、最後まで影響力を及ぼした方もいました。エリザベス女王もその一人です。

 90歳を超えても精力的に公務をこなし、知能の衰えを見せていませんでした。また、バルモラル城での静養中に領地内で運転もされてたそうです。

 2020年時点で、我が国の認知症者は600万人を超えており、65歳以上の高齢者の中で16%の有病率となっています。この割合は年齢とともに増え、90歳以上では半数以上が認知症になると言われます。

 その反面、女王と同様に高齢になっても仕事を持ち、家事を切り盛りし、車を乗り回すアグレッシブな高齢者も多数おられます。はるの職場でも、かつて90歳を超えた看護師さんがいらっしゃいました。若輩の我々を叱咤しながら激務をこなす姿に畏敬の念を隠せませんでした。

 

 では、何が生涯現役を貫く彼らと、そうでない方の人生を分けるのでしょう。はるにとって永遠のテーマです。明確な答えは出ていません。しかし、心身ともに健康な生き方をするために、気を付けることはいくつかあります。

 認知症予防に繋がることとして、一般的に言われていることは4つあります。

1つめは運動です。適度な運動を持続することで、肥満や高脂血症、糖尿病といった基礎疾患のリスクを軽減し、脳血管疾患の予防にもつながります。また、運動により脳内の神経細胞を増殖、成長させる神経栄養素BDNFが増え、学習パフォーマンスが向上したと動物実験で証明されています。

2つめは栄養です。DHAなど、不飽和脂肪酸が多く含まれる食生活では、アルツハイマー認知症の発症が、取らない生活に比べ7割も減少するそうです。また、野菜や果物、魚介類、オリーブオイル、豆、雑穀中心の地中海式の食生活もアルツハイマー認知症を抑える効果があるようです。どうも、炭水化物の多い食事は認知症にも好ましくはないようです。

3つめは、ゲームや読書といった知的活動です。アルツハイマー認知症は、特殊なタンパク質が脳細胞に沈殿することで起きますが、動物実験では検体の刺激を増やすことで、タンパク質の沈殿も減少したようです。

最後は社会的交流です。当然ですが、家族や親しい友人との繋がりは、人として生活していく上でかけがえのないものです。

 

 そういえば、女王は存命中に炭水化物の摂取を意識的に控えていたそうです。長く元気に生きていくためにも、グルテンとは程よい距離感が必要なのかもしれません。

 https://www.cosmopolitan.com/jp/trends/lifestyle/news/a4840/this-is-what-the-queen-eats-everyday/

 はるが60歳を迎えるころ、定年は70歳に引き上げられると言われています。しかし、生活のために働いていた時代と、50代、60代の働く意味は変わってくると考えています。社会との繋がりを持つため、好きなことを生かすため、子供や孫に小遣いをあげるためなど、より自分の意思で働き方を選択出来ます。

 はるは、今の仕事には大きな生きがいを感じていますが、長く続けられるものとは思っていません。新陳代謝の激しい業界ですから。なので、ここで得た経験を土台に、新たな働き方を手に入れてセミリタイアしたい。このブログが、その足掛かりになればと思っています。

 

息子さんは70過ぎてから現役スターㇳ。

頑張れ!誰が何と言っても今日が一番若い日だ!